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【体験版】アンジェリーク ルミナライズ(アンミナ)感想

アンジェリークルミナライズ、略してアンミナの体験版をプレイした。

1周目の定期審査で引き分けだったのが悔しくて2周して、3周目もしようかと思うくらいには楽しかった。

製品版をプレイしたらまた違う感想を持つと思うので、自分への備忘録もかねて今の時点の感想を書いておこうと思う。


アンジェリークはルミナライズが初プレイ。カイリ先生の漫画は読んだので神鳥のメンツと世界観は把握している状態。


体験版(定期審査の27日目まで)の範囲ではあるが、具体的なプレイ内容の記載があるので注意されたし。

 


〇女王候補への転職

仕事に疲れ果てていた主人公は、立ち寄ったバーにて酔余の一興で女王候補の契約をしてしまい、結果現れたペガサスに乗った青年に飛空都市へと連れられる。

初見はそんなノリでサインすなと思ったが、この導入を経ることで、後にサイラスの言う「あなたがどれだけ失敗を重ねても、あなたを軽んじるものはいない」が説得力を持つ。

というのもアンジュは酔って契約、更に人の顔みて気絶、という失態が周知されている、かなり恥ずかしい状態で女王試験をスタートする事になる。

しかしそんな失敗をしても、アンジュ自身が軽んじられることはない。

無論全く指摘されないわけではなく、フェリクスにからかわれるし、シュリには覚悟を問われるが、その後の彼らの女王候補として見定める視線はあくまでフラットだ。

アンジュの能力はどうこうではなく、アンジュがアンジュというだけで、この世界に受け入れられているということがわかる。

 


受け入れられているので、女王なんかになりたくない、と主張しても怒られないし否定もされない。

ただ、女王試験は人生の休憩時間と考えてみればいい、とサイラスから説かれる。令梟の宇宙の危機、というのはあくまでおまけに過ぎないのような物言いである。

事情を伏せたまま女王試験を受けさせるための方便とも捉えられるが、現実を日々がんばる女王候補(プレイヤー)に、女王試験(ゲーム)を通じて癒やされてほしいという開発の思いがくみ取れた。

 


〇共感と興味

会話中に表示される選択肢によって、親密度が上がったり下がったりすることはない。

たとえば浮き世離れした緑の守護聖に豊かさとは何かと問われ、お金がいっぱいあることです!と世俗に塗れた回答をしても、仕事熱心な炎の守護聖に女王の覚悟を問われてモチベそんなにないです、と正直に吐露しても親密度は下がらない。

代わりに変化するのは共感と興味の度合い。違う人間なら考えが違うのも当たり前なので、価値観が異なっても好感情には作用しないということだ。

相手に合わせて自分に嘘つくことも心にキャバ嬢を住まわせる必要もない。快適。

アンジュが選択にきちんと理由を捕捉するので、守護聖がそれに一定の理解を示す流れも違和感がなかった。

 


〇(育成と)妨害

妨害の描写が印象的だったので触れておく。

妨害とは相手の大陸から力を奪う行為なので、間接的な殺生では……?と若干の抵抗があった。

しかし妨害も試験の手段として推奨されるし、チュートリアル受けるとレイナから妨害される。ライバルから先手で妨害される事で、プレイヤーの妨害への抵抗感を和らげる流れが上手いなと思った。

また守護聖に妨害を依頼しても親密度は下がらないし、寧ろそういう事も必要だねと上がる。

妨害が実行されるときも、天に建物が吸い込まれ大衆がため息をつく、というコミカルチックな演出で罪悪感を持たせない作りになっている。よかった、妨害で誰も死んでない。

なお試験開始から半月過ぎたあたりからレイナを妨害しようとしても、向こうもリダイレクタを設置しているのか大体跳ね返されたので、妨害しかけるなら序盤がおすすめ。

 


〇難易度「難しい」

乙女ゲームはゲーム難易度低め、「普通」なら圧勝するだろう。というなめくさった偏見から難易度「難しい」と選択したら本当にハードだった。

レイナ、デキる女の本領発揮と言うべきか、めちゃくちゃ手強い。

中盤で引き離したかと思ったら、守護聖がレイナの大陸へ自主育成を行い、あっという間に追いつかれる。

完全なレイナ陣営のミランが自主育成するのは納得したが、こちらと相性が高く何回か平日デートして視察もしたカナタくんが内緒でレイナに力を送ったときはなして!???となった。


レイナよりひとつ少ない体力を補間するため、エナドリ(試供版)を飲む日々。

1周目は大陸発展度13対13で引き分け。

前日の時点で勝ちが見込めたのだが、まさかのカナタくんがレイナに2回目の自主育成をし同点。逆の陣営だったら中々にドラマティックな展開だったな……と肩を落とした。

悔しさをばねに挑んだ2周目は大陸レベル16対15でギリギリの勝利。新米女王候補にしてはいい戦いができたのではと思う。


なお1周目2周目ともにレイナへの自主育成が2回づつあった。

たいしてこちらにたいする自主育成はどちらも0回。こ、孤独……!

それだけに勝ったときは嬉しさ倍増で、守護聖の助力がなくとも己の采配だけで勝ち上がってやるわ、と孤独感と達成感がない交ぜになった奇妙な快感を抱いた。たぶん信長の野望とかで抱くべき感情だと思う。

 


〇守護聖

強いサクリアを持ったが為に「神様」の枠にカテゴライズされてしまった「人間」の方々。

神様、という先入観でかかるとあまりのフランクさに拍子抜けする。

親しみやすく、しかし各々の領域には踏み込まない、本当に「同僚」という感じ。

あと全体的に人は人、自分は自分という、個人主義の風を感じた。


以下体験版プレイ時点での各キャラ感想。


●光の守護聖ユエ

俺様キャラのような第一印象で俺様じゃないし、王子様キャラのような見た目で王子様じゃない。

強いていうなら「おもしれー男」だと思う。

ユエはよく笑い、よく怒り(割と短気)、よくボケる。ボケる、というか唐突にコメディリリーフと化す。

サイラスのボケはああここで来るな、となんとなく気構えができるのだが、ユエはそこでそんなこと言うんだ?みたいな台詞が多くて予想がつかない。親しくなると話していて飽きないと言われるがこちらの台詞です。

自己肯定力が鬼のように高く、接していて「笑顔」になれるので、元気のない人におすすめ。

部屋の前で他の守護聖と鉢合わせた際、彼を選ぶと得意げに鼻歌歌い出すところ好き。

太陽のような気質の男だけに、名前が月(中国語で月はユエ)なのは不思議だなと思っている。


●闇の守護聖ノア

声変わり前の少年役にも徹底して男性声優を宛がう今の風潮にあって、珍しく女性声優が配役されている。

大はまりだと思う。ぽつねんとしたスキーボイスが、年に見合わぬ幼さをよく表現している。

自らを忌み子とするような厭世的な言動が多いが、個人的には忌み子というか「魔性」……。

笑顔の立ち絵がほぼサシで話しているときのみなので、「自分だけには心を開いてくれている!」と相手に勘違いされるタイプの魔性では?と思う。

ユエを鬱陶しがっているが、ユエがいなかったら完全に孤立してしまう気がするので、もっと感謝した方がいいと思うよ。

掃除セットをプレゼントすると大変喜んでくれるのだが、掃除セットの機能が如何に優れているかを細かく説明してくるあたりに、不器用さとひたむきさが窺えてとても可愛かった。


●風の守護聖ヴァージル

公式Twitterのクリスマスコメントや公式サイトのssで一人だけ女王への感心が頭ひとつ抜けているので、前から気になってはいた。

アンジュにたいする第一印象が「可愛らしい候補」だが、顔みて数秒で気絶、という体を張った芸にたいする感想なので、可愛いは可愛いでも、ひ〇にゃんじゃなくてふ〇っしーにたいする可愛いの部類な気がする。

印象は「見た目は王子、中身は戦士」。

軽い運動と言いながら超ハードなプランを提示されるし、飛空都市の感想を聞くと戦略的見地から見た回答をされるので、根っからの戦闘員なのだなと感じた。弱味に繋がるような質問をするとはぐらかされるし。

常識がありそうでないというか、物を見る見地がバース出身のアンジュとはまるで違う。

水晶玉を覘いた先の、敬語のない素の口調でぼやく彼は、王子様とは遠い、普通の男性に見える。普通の男性はスクワット500回を軽いとは言わないけど。


●水の守護聖カナタ

花のGWを前にバースから飛行都市に連れて来られた「ごく普通の男子高校生」。

カナタくんのTwitterアカウント(公式サイトのキャラ紹介ページから飛べる)には失踪当日の実況が生々しく綴られているのだが、失踪時のごく短期間だけ表示された、猫アイコンに覆い被さるフクロウの紋章はまさしく呪いの印のようだった。

出会ってまもなく、「逃げるなら今だよ」「試験に負けたら帰れる。負けちゃいな」こちらが心配すべきところを、逆に忠告してくれる。健気で泣けてくる。

周りのサポートや前任者の手紙もあってか、試験2週目あたりで一区切りついたようで守護聖としての決意表明をするが、こちらは年長者らしいこと全くできていないのでもどかしくなる。

まだ18歳なのにデートではちゃんとエスコートしてくれる。偉すぎる。

あと親密度が低いときの塩というか態度の悪さも、リアル男子高校生という感じで大変よかった。デフォが良い子なだけで、実際の高校生なんてあんなもんだろう。

定期審査の夜に水晶玉を覘いたら暫く訪問していないことを寂しがっていたので、28日目の朝は速攻でお邪魔しようと思う。


●炎の守護聖シュリ

公式で「意外な色気」と紹介されているが、普通に喋ってるだけで色っぽいと思う。別の守護聖の部屋を訪れたときすれ違いに出て行く彼を尻目に捉えていい男だな、と思うくらいには。

初めての公園デートに誘ったら全然デートの雰囲気じゃなくて笑ってしまった。面談じゃん。

この朴念仁に質問を許すと甘さの欠片もない口調で言われて、笑顔をお願いします!と返せるアンジュは強い。

印象は「首輪のついた野犬」。普段の振る舞いは守護聖らしく理知的だが、ふとしたときに粗暴な物言いが零れる。

「俺は寄ってくる女を拒みはしない」で何それ見たいー! と勝手に沸いた。この色男が試験以外で他の女性を相手にするとこめっちゃみたい。

公開されているスチルがお姫様だっこに壁ドンと王道シチュなので、恋愛イベントでもお約束展開一通りやってくれるんじゃないかと期待している。


●緑の守護聖ミラン

雑誌でのパーソナルパラメータでは気遣い力1だったが、実際3はあると思う。

こちらの元気がないと見たら踊りで元気づけてくれたり、転びそうになったら身を挺して庇ってくれたり。言動みたら普通にいい人。

他者の感情にも聡いと思う。それに引き摺られることがないだけで。

濁りがないが、あまりにも深遠のため、覗き込んでも底が見えないような。そんな捉え所のなさを感じさせる。

印象は「大人にも子供にもなれなかった人」。憶測も入るが、子供の時に「神様」の枠に押し込められ、大人になる通過儀礼を得ないまま、「神様」として大成してしまった人、という感想を思った。

占いを話題にしたときに彼が話してくれる、カップに滴る水音で天気を占う話が風情があってとても好きだ。


鋼の守護聖ゼノ

めっっっっちゃいい子。こんないい子がいていいのか?

こちらが心配になるくらいに底抜けに人が良いし、同じくらい自己評価も低い。

よく俺なんか、と卑下するが、アンジュ本人より優秀なアンジュアンドロイドを作る時点で相当優秀である。見ていると苛々するというフェリクスの気持ちも分からなくはない。

対異性(女王候補)と対同性(カナタ)で微妙に口調変わるところ好き。大陸視察先の男の子と親しくなり、アンジュを置いてきぼりにサッカーに興じてしまうところは19歳の男子らしい。

印象は髪質も相まって「愛嬌のあるアイリッシュウルフハウンド」。ゼノだけ外見で申し訳ないが、見た目とか人なつっこさとか大型犬っぽい。

今のところ完全に友達の距離感なのだが、男らしい1面がある、と中の人が推していたので、恋愛イベントでその一面が見れるのが楽しみである。


夢の守護聖フェリクス

正直PV公開時は取っつきにくそうで苦手な印象だった。

しかし相性の高さのためか、1周目も2周目も、最初に部屋に誘いに来てくれたのでその時点ですき…とぐらつく。

酔っ払いの女王候補とか、年の割に落ち着きがないとか評価を下されぐうの音でも出ないが、言われてみると思ったより苦手意識が湧かなかった。

中の人の演技もあってか、声は凜としているが心を裂くほど尖ってはいない。

言った後は引き摺らないし、本心を偽ることもしないので、慣れてしまえば寧ろ付き合いやすい。

礼や謝罪が素直に出てくる育ちの良さと、笑顔立ち絵の悪童っぽさもあって、今のところの印象は「品の良い男子学生」。

身体を冷やさないようにストールを持って来てくれる個別イベントが、彼の気遣いとそれを当たり前に思う姿勢が感じられて好き。


地の守護聖ロレンツォ

物言いは優しいし、的確なアドバイスをくれるが、親身というほどの熱は感じない。

今のところの印象は「他ゼミの教授」。

穏やかな声音は心地よくゆらぎそうになるが、寄りかかった途端に体よくハシゴを外されるんだろうなと思う。

終始こちらを年少者として扱う態度であり、他の守護聖への態度と比較して、ところどころ加減されていると感じる。

精神年齢が違いすぎて、対等な恋愛関係を築ける気があまりしない。

サンプルボイスでアンジュを私の可愛い生徒と言っているので、マイフェアレディのようにまず自分と同じ領域に立てるよう育て上げられるという事なのだろうか。


レイナ

見た目は高嶺の花で、話し方も落ち着いているが、気取ったところはない。

話してみると同性の友人への憧れや、見た目に反してお伽噺が好きなことがわかるので、一気に可愛く思える。

印象は「女の顔をした少女」。「有能な大人の女性」と、「夢物語に憧れる少女性」がうまく両立したキャラ造形だと思う。

ライバルが出てくる乙女ゲームをプレイするのは初めてなので、彼女が他の守護聖と親密になったとき自分がどういう心境になるのか若干心配だったのだが、蓋を開けてみれば全然抵抗がなかった。

守護聖とデートしてるとき赤面してて可愛いし、彼女が守護聖にデートを断られ落ち込んでいると誰だレイナを振った不遜な奴は!となる。

なおレイナの親密度を上げておくと、恋バナで「あなたが一番仲良いと思うわ」という台詞が聞ける。嬉しいあまり、レイナの口から他の男の名を出させまいと彼女の親密度上げに腐心するよくわからないプレイをしていた。


サイラス

本作の狂言回し。

この執事がまあ癖が強い。アフレコした中の人相当楽しかったろうなと思う。

あまりにも独特なので、印象を述べようにも「サイラス」の他に形容しようがない。

慣れてくるとどんなボケをするかはだいたい読めるようになるが、何を考えているのかは依然としてわからない。いつでも心にソーシャルディスタンスを保っている。

ぼけを連発した結果、サイラスと話しているときのアンジュが大体ジト目なのがじわる。

占いとおまじないを説明する際の、効能を疑うアンジュの心の声に全部「本当です」と返してゆく流れテンポよくて好き。


タイラー

今のところ台詞の9割が説明なので、人となりについて述べにくい。

時々零れる素の口調は、どこにでもいそうな25歳男性、という感じ。

アンジュのことを覚えていないので一時記憶操作を疑ったが、単純にアンジュに興味がなくて覚えてないだけでは?とも思っている。

 

体験版とは思えないくらいテキスト量が多く、製品版で恋愛イベントや夜の視察、帰省イベント等が解放されたらどれくらいの情報量に溺れることになるんだろうかと思うと、期待を通り越して不安にすらなる。

5/20の販売日を本当に楽しみに待っている。

【ネタバレなし】Corpse†Heart感想 ※2018/1/6追記

先日視聴したアンデッドミュージカルCD「Corpse†Heart」が、凄く面白かったので、
まだ購入されてない方へのアピールもかねて感想をまとめました。
5th Nightのネスまで視聴済です。
6th Nightのアロンまで待った方が感想を総括しやすいのですが、昂奮して待てなかった……。
尺が短いと言われてますが、それを補って余るほど、キャラもストーリーも曲も面白いです。
2018/1/6追記
6th Nightのアロン編、全巻購入特典CDの感想を追記したほか、全体的に加筆修正を加えました。


以下、具体的な内容のネタバレは極力避けたつもりですが、公式HPで公開されている内容についてはネタバレには含まないものとして記載しておりますので、ご了承願います。

★ドラマパート
公式HPで公開されているサンプルボイスで雰囲気はだいたい伝わります。

内容をざっくりいうと
前半→サンプルボイスの優しい彼と青春
後半→ダークゴシックファンタジーの世界にようこそ!(BGM:各キャラソンミュージカルver)
前半と後半の温度差が本当に凄いので、ジェットコースターばりの急降下を楽しんでほしいです。
どことなくハリポタちっくなBGMや魔法のSE等、演出も拘って作られています。

ドラマパートは3トラック分。尺は今までのCDと比べれば短いです、合計で20分くらい?
さくっと聞けて、何度も気軽にヘビロテできるのは利点だと思います。尺が短いので話がダレようがないし。
また短尺ながら、ヴァレリーとクー、キルミはよくまとまっていたと思います。
ただ、今回どうしても尺が短いので、所々駆け足感は否めない。場面転換の回数からしても、1時間尺使い切れたと思います。
そこのシーンもっと聞きたいのに! とか、そこ台詞で終わらせないでちゃんとシーンを描写して! とか、
如何せんシナリオが面白いが故に、端折られた箇所に対する物足りなさはある。
また、キャラ紹介文に書かれている内容で、本編に全く触れられていないものもあるので、尺があればそこにも触れられたのかなと。

話自体は一枚で完結していますが、キャラの色んな面をもっと見たいと思わせる内容です。
また、巻を経るごとに謎が謎が呼び、最終巻で回収する構成も上手いと思います
続編が出るか否かは売上にかかってるので、この感想を読んで少しでもコプハーが気になったら買ってください。(本音)

2018/1/6追記
コプハーにおいて鍵となるのは、ヒロインが持つ「心臓<ジュエルハート>」。
アンノウンにおいて生きている人間はヒロインだけであり、ジュエルハートは生者の証として、アンデッドが復活祭で蘇る為のアイテムとして、凡庸なヒロインを特別たらしめます。
だけでなく、心臓の音によってアンデッドがヒロインの位置を特定することができたり、その音の違いでヒロインの感情を(アンデッド達にとって都合よく)推察する材料になったりと、物語の様々な箇所で場の盛り上げに寄与します。
ディアラバでは「血」、ダンデビでは「グリモワール」と、Rejet作品では、キャラがヒロインに接触する理由付けとなる、何かしらのキーアイテムをヒロインに付随させるのが定番ですが、コプハーにおいては「心臓」という形で、その仕掛けが見事に生きています。


★キャラソン
ミュージカルverとアンデッドverで、曲調の異なる曲が2曲ついています。
ミュージカルverはドラマパートのワンシーンを朗々と歌い上げるイメージ、アンデッドverはドラマパートでは語られなかったキャラの細やかな心情を歌っているイメージです。
ドラマパートを視聴した後に曲を聴くと、キャラの隠された本音が伺えて、世界観が更に広がります。

サンプルソング視聴のときはミュージカル版の方がインパクトがあって好きでしたが、購入後は歌詞が多めのアンデッド版の方をヘビロテしています。
勿論、音の広がりの大きいミュージカル版も好き。ダンデビみたいにミュージカルアニメ化してほしいくらい。
個人的にはヴァレリーのアンデッド曲「Candy Hearts」が、彼の不安定な心理を表していて好きです。
2018/1/6追記
ミュージカルverは第1トラック、アンデッドverは第2トラックに収録されています。
つまり、普通に第1トラックから視聴すると、のっけから曲の歌詞でドラマパートのネタバレを喰らいます。
ネタバレ回避の為、ジャケ裏の歌詞カードは封印したまま、第3トラックから視聴することを強くおすすめします。
特にネスとアロン。このふたりはネタバレは公式のサンプルソング・サンプルボイス共に明かされていない上、本編の暗転が見事なので、是非とも、予備知識なしでドラマパートを聴いて頂きたいです。


★キャラクター
人の形をした人ならざるもの達。
ヒロインを復活の為の獲物としか思っていない残忍性を持っていますが、
それを覆い隠して、表面的にはヒロインに友好的に接する社交性をも持ち併せているのが、
只の人外ではなく、かつてはヒロインと同じ人であった頃の名残りを感じさせます。
また感情の根源は人らしいものでも、それを満足させる為の手段が常軌を逸していたりと、完全に人外になりきれていないアンバランスさを感じ取りました。

以下、キャラごとの感想をざっくりまとめ
 
■リジィ(CV.木村良平)
シリーズ1枚目を飾るに相応しいアンノウン学園の跡部さm…もとい王子様。なんで跡部様なのかはミュージカルver聴けばわかる。
俺様だがサービス精神旺盛。勉強のできるヤンキーで、家柄なのか稼ぎがいいのか金もある。ハイスペック男。
大体のメンツが前半猫被ってる中、リジィだけ終始素面なので、ある意味安心して見てられる。
ヒロインをやや強引に口説いているときも、ドS全開で嬲るときも楽しそう。
ラストトラックはエロい。リップ音万歳。3倍尺あっても良かったんやで…。
CVはRejetご用達声優きむりょ。ただし今回は珍しく低音ボイス。甘やかな俺様ボイスに痺れよう。
 
ヴァレリー(CV.増田俊樹)
恐怖度ダントツNo.1。増田俊樹氏の怪演が光る。
見た目から本性はテンション高い愉快犯かと思いきや、一本ネジが外れたような、やや吃音気味の話し方をする。怖い。
ヒロインに狂気的な執着を見せるが、狭義な意味でのヤンデレには当てはまらないと思う。寂しがり屋の子ども。
個人的にナイフを取り出してのシーンはリジィのラストトラックに匹敵するエロさだった。
CVは前述の通りだーます。(私の観測内では)綺麗どころの役が多かっだーますが、こんな偏執狂の演技ができたのかと、演技の幅に広さに感嘆した。
キャラも立っているしストーリーもまとまっているので、個人的には一推し。

■クー(CV.豊永利行)
お人形さんのような可愛い顔して案外声が低い。Rejetのそういう男の子であることを忘れないキャラ造形大好きです。
前半は優等生の彼と、友達以上恋人未満な関係。小さな恋のメロディが聴こえてくる。
後半は仕事人モードの彼とシュワちゃんごっこ。他の面子が遊び半分の中、クーちゃんだけ純粋に殺しにかかってくるのでめっちゃ怖い。
そして愛が重い。命令をこなすだけだったお人形が、ヒロインを大切に思うまでの流れは王道ストーリーなのに、その先がRejet……。
CVはとっしー。青年期と少年期の間のようなハスキーボイス。フリトは本編との温度差で風邪をひきます。某ヴォーカリストとの演技の方向性の違いを語るくだりは必聴。

■キルミ(CV.下野紘)
リジェの男コプハー代表。上げて落とす系の典型で、間違いなく一番猫被りを楽しんでいた。
前半は彼氏力の高すぎる男友達。復活祭を経ての距離の縮め方が上手い。そしてその手のリジェ男の例に漏れず、後半のネタばらしシーンでの煽り力は誰よりも高い。
優しさと狡賢さがかわるがわる顔を出すさまは気分屋な猫そのものだし、ヒロインを虐めるシーンは鼠をいたぶる猫のそれ。
本音をはぐらかし続けられた感じがするので、続編があるならより深いキャラの掘り下げがほしいところ。
CVは下野さん。いい子いい子と褒められると脳が幼児退行する。
 
■ネス(CV.石川界人)
本シリーズのダークホース。予想でニア枠とかいってまじごめん。
シリーズ中唯一、ふたりが付き合っているところから物語が始まる。付き合ってそれなりの時が経った、恋人同士ならではのやり取りはシリーズ屈指の糖度。
後半では他の面子とは違った流れで、奈落の底へ突き落されます。
一番続編が待ち望まれるラストだった。あの絶望感溢れるセリフで終わるのはあまりに哀れが過ぎる。
CVはおそらくRejetでは初参加の石川プロ。耳元で意地悪げに囁くシーンはおすすめ。

■アロン(CV.小野友樹) 
未登場なのに巻を経るごとに胡散臭さが増すお兄様。
お礼参りしてやるから待っていろという気持ちで発売日を待っています。
2018/1/6追記
新しいタイプのRejetのお兄ちゃん。よくこれだけ違うタイプのヤバい兄貴キャラ産み出せるなとつくづく思う。
前半は妹一筋の過保護で優しい、いつものRejetのお兄ちゃん。復活祭のつり橋効果で恋を育んでゆくが、両者に背徳感が特に感じられないのが却ってうら寒い。
後半で本性を現した後は、この顔とこの声でこんな演技するのかよ!? ってくらい、ぞっとするような下衆さを見せる。
全体的に倫理観がやばい。上でヴァレリーが恐怖度No.1と書いたが、本質的なおぞましさはアロンのが遥かに上。ある意味、ヒロインが一番可哀想な話。
CVはおのゆー。本性を現した後の吐息混じりの話し方が最高。

 

2018/1/6追記
★全巻購入特典「アンデッドクエスト ~幻の花~」
タイトル通り、某懐かしのファミコンゲームのネタがふんだんに盛り込まれたどたばたギャグ。
本編ではみんな前半猫被っていたので、特典もそうかと思いきや、みな最初から素の状態だった。
特典のアンデッド達はSNSも使いこなすしメタ発言もする。かっこいいアンデッドはいません。みんな残念イケメン。
リップサービス程度の取り合いらしきシーンもあるが、逆ハー要素は薄め。個人的にはその方が違和感なく聴けた。
正直、本編の尺が短いので、25分も彼らが喋ってくれるだけで満足感がやばい。かつ25分まじで面白いシーンしかないから多幸感がやばい。ずっと笑っていられる。
本編では全く触れられなかったキャラ設定がちょいちょい回収されていたのはちょっと笑った。
まだアニメイトオンラインショップでは特典が残っている(2018/1/6時点)ので、今からでもゲット可能。
皆も全巻買ってアンデッド達と冒険に繰り出そう!


★その他、個人的なおすすめポイント
本シリーズで面白いなーと思うのが、サンプルボイスから察せられる通り、
6人中3人(ヴァレリー、クー、キルミ)が、ヒロインの「お友達」からスタートしていること。
いや、異性の友達って別に珍しくもない話なんですけども、Rejet作品では珍しいなと。
そこまでRejet作品に精通している訳ではないんですが、今まで聞いてきた他のRejet作品では、
まず初対面で「ちんちくりん女」「よくみると可愛い」みたいな、
良きにつけ悪しきにつけ、女(ひいてはそういう対象)としての品評を受けることが多かったので。
Rejet作品って性的な繋がりを重視している節があるので、そういう勘定を抜きにした「男友達」の概念はないものだと勝手に思っていました。
(ついでにいうとRejet作品において、男女の友情は成立しないものだと思っています)
なので、本シリーズで3人も(ヒロインを利用していたとはいえ)友達として収まっていたのが本当に意外でした。
「勉強のできる穏やかな生徒」の3人が友達として過ごしているのにたいし、
見た目ヴィジュアル系のリジィとネスが、ヒロインをガッツリ女として見ているのも対照的で面白い。
 
この「(仮初めの)男友達」が、復活祭を経てどのような関係に帰結するのか。
そこに着目してみると、Rejet作品の新しい面が見えてくるんじゃないかしら、と思います。
 

長々と書きましたが、短尺ながらもエンターテイメント性がとても高いCDだと思います。
まだ購入されていない方は是非ともご一考を。コプハーは、いいぞ!