ペンギンキネマ

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【ネタバレなし】Corpse†Heart感想 ※2018/1/6追記

先日視聴したアンデッドミュージカルCD「Corpse†Heart」が、凄く面白かったので、
まだ購入されてない方へのアピールもかねて感想をまとめました。
5th Nightのネスまで視聴済です。
6th Nightのアロンまで待った方が感想を総括しやすいのですが、昂奮して待てなかった……。
尺が短いと言われてますが、それを補って余るほど、キャラもストーリーも曲も面白いです。
2018/1/6追記
6th Nightのアロン編、全巻購入特典CDの感想を追記したほか、全体的に加筆修正を加えました。


以下、具体的な内容のネタバレは極力避けたつもりですが、公式HPで公開されている内容についてはネタバレには含まないものとして記載しておりますので、ご了承願います。

★ドラマパート
公式HPで公開されているサンプルボイスで雰囲気はだいたい伝わります。

内容をざっくりいうと
前半→サンプルボイスの優しい彼と青春
後半→ダークゴシックファンタジーの世界にようこそ!(BGM:各キャラソンミュージカルver)
前半と後半の温度差が本当に凄いので、ジェットコースターばりの急降下を楽しんでほしいです。
どことなくハリポタちっくなBGMや魔法のSE等、演出も拘って作られています。

ドラマパートは3トラック分。尺は今までのCDと比べれば短いです、合計で20分くらい?
さくっと聞けて、何度も気軽にヘビロテできるのは利点だと思います。尺が短いので話がダレようがないし。
また短尺ながら、ヴァレリーとクー、キルミはよくまとまっていたと思います。
ただ、今回どうしても尺が短いので、所々駆け足感は否めない。場面転換の回数からしても、1時間尺使い切れたと思います。
そこのシーンもっと聞きたいのに! とか、そこ台詞で終わらせないでちゃんとシーンを描写して! とか、
如何せんシナリオが面白いが故に、端折られた箇所に対する物足りなさはある。
また、キャラ紹介文に書かれている内容で、本編に全く触れられていないものもあるので、尺があればそこにも触れられたのかなと。

話自体は一枚で完結していますが、キャラの色んな面をもっと見たいと思わせる内容です。
また、巻を経るごとに謎が謎が呼び、最終巻で回収する構成も上手いと思います
続編が出るか否かは売上にかかってるので、この感想を読んで少しでもコプハーが気になったら買ってください。(本音)

2018/1/6追記
コプハーにおいて鍵となるのは、ヒロインが持つ「心臓<ジュエルハート>」。
アンノウンにおいて生きている人間はヒロインだけであり、ジュエルハートは生者の証として、アンデッドが復活祭で蘇る為のアイテムとして、凡庸なヒロインを特別たらしめます。
だけでなく、心臓の音によってアンデッドがヒロインの位置を特定することができたり、その音の違いでヒロインの感情を(アンデッド達にとって都合よく)推察する材料になったりと、物語の様々な箇所で場の盛り上げに寄与します。
ディアラバでは「血」、ダンデビでは「グリモワール」と、Rejet作品では、キャラがヒロインに接触する理由付けとなる、何かしらのキーアイテムをヒロインに付随させるのが定番ですが、コプハーにおいては「心臓」という形で、その仕掛けが見事に生きています。


★キャラソン
ミュージカルverとアンデッドverで、曲調の異なる曲が2曲ついています。
ミュージカルverはドラマパートのワンシーンを朗々と歌い上げるイメージ、アンデッドverはドラマパートでは語られなかったキャラの細やかな心情を歌っているイメージです。
ドラマパートを視聴した後に曲を聴くと、キャラの隠された本音が伺えて、世界観が更に広がります。

サンプルソング視聴のときはミュージカル版の方がインパクトがあって好きでしたが、購入後は歌詞が多めのアンデッド版の方をヘビロテしています。
勿論、音の広がりの大きいミュージカル版も好き。ダンデビみたいにミュージカルアニメ化してほしいくらい。
個人的にはヴァレリーのアンデッド曲「Candy Hearts」が、彼の不安定な心理を表していて好きです。
2018/1/6追記
ミュージカルverは第1トラック、アンデッドverは第2トラックに収録されています。
つまり、普通に第1トラックから視聴すると、のっけから曲の歌詞でドラマパートのネタバレを喰らいます。
ネタバレ回避の為、ジャケ裏の歌詞カードは封印したまま、第3トラックから視聴することを強くおすすめします。
特にネスとアロン。このふたりはネタバレは公式のサンプルソング・サンプルボイス共に明かされていない上、本編の暗転が見事なので、是非とも、予備知識なしでドラマパートを聴いて頂きたいです。


★キャラクター
人の形をした人ならざるもの達。
ヒロインを復活の為の獲物としか思っていない残忍性を持っていますが、
それを覆い隠して、表面的にはヒロインに友好的に接する社交性をも持ち併せているのが、
只の人外ではなく、かつてはヒロインと同じ人であった頃の名残りを感じさせます。
また感情の根源は人らしいものでも、それを満足させる為の手段が常軌を逸していたりと、完全に人外になりきれていないアンバランスさを感じ取りました。

以下、キャラごとの感想をざっくりまとめ
 
■リジィ(CV.木村良平)
シリーズ1枚目を飾るに相応しいアンノウン学園の跡部さm…もとい王子様。なんで跡部様なのかはミュージカルver聴けばわかる。
俺様だがサービス精神旺盛。勉強のできるヤンキーで、家柄なのか稼ぎがいいのか金もある。ハイスペック男。
大体のメンツが前半猫被ってる中、リジィだけ終始素面なので、ある意味安心して見てられる。
ヒロインをやや強引に口説いているときも、ドS全開で嬲るときも楽しそう。
ラストトラックはエロい。リップ音万歳。3倍尺あっても良かったんやで…。
CVはRejetご用達声優きむりょ。ただし今回は珍しく低音ボイス。甘やかな俺様ボイスに痺れよう。
 
ヴァレリー(CV.増田俊樹)
恐怖度ダントツNo.1。増田俊樹氏の怪演が光る。
見た目から本性はテンション高い愉快犯かと思いきや、一本ネジが外れたような、やや吃音気味の話し方をする。怖い。
ヒロインに狂気的な執着を見せるが、狭義な意味でのヤンデレには当てはまらないと思う。寂しがり屋の子ども。
個人的にナイフを取り出してのシーンはリジィのラストトラックに匹敵するエロさだった。
CVは前述の通りだーます。(私の観測内では)綺麗どころの役が多かっだーますが、こんな偏執狂の演技ができたのかと、演技の幅に広さに感嘆した。
キャラも立っているしストーリーもまとまっているので、個人的には一推し。

■クー(CV.豊永利行)
お人形さんのような可愛い顔して案外声が低い。Rejetのそういう男の子であることを忘れないキャラ造形大好きです。
前半は優等生の彼と、友達以上恋人未満な関係。小さな恋のメロディが聴こえてくる。
後半は仕事人モードの彼とシュワちゃんごっこ。他の面子が遊び半分の中、クーちゃんだけ純粋に殺しにかかってくるのでめっちゃ怖い。
そして愛が重い。命令をこなすだけだったお人形が、ヒロインを大切に思うまでの流れは王道ストーリーなのに、その先がRejet……。
CVはとっしー。青年期と少年期の間のようなハスキーボイス。フリトは本編との温度差で風邪をひきます。某ヴォーカリストとの演技の方向性の違いを語るくだりは必聴。

■キルミ(CV.下野紘)
リジェの男コプハー代表。上げて落とす系の典型で、間違いなく一番猫被りを楽しんでいた。
前半は彼氏力の高すぎる男友達。復活祭を経ての距離の縮め方が上手い。そしてその手のリジェ男の例に漏れず、後半のネタばらしシーンでの煽り力は誰よりも高い。
優しさと狡賢さがかわるがわる顔を出すさまは気分屋な猫そのものだし、ヒロインを虐めるシーンは鼠をいたぶる猫のそれ。
本音をはぐらかし続けられた感じがするので、続編があるならより深いキャラの掘り下げがほしいところ。
CVは下野さん。いい子いい子と褒められると脳が幼児退行する。
 
■ネス(CV.石川界人)
本シリーズのダークホース。予想でニア枠とかいってまじごめん。
シリーズ中唯一、ふたりが付き合っているところから物語が始まる。付き合ってそれなりの時が経った、恋人同士ならではのやり取りはシリーズ屈指の糖度。
後半では他の面子とは違った流れで、奈落の底へ突き落されます。
一番続編が待ち望まれるラストだった。あの絶望感溢れるセリフで終わるのはあまりに哀れが過ぎる。
CVはおそらくRejetでは初参加の石川プロ。耳元で意地悪げに囁くシーンはおすすめ。

■アロン(CV.小野友樹) 
未登場なのに巻を経るごとに胡散臭さが増すお兄様。
お礼参りしてやるから待っていろという気持ちで発売日を待っています。
2018/1/6追記
新しいタイプのRejetのお兄ちゃん。よくこれだけ違うタイプのヤバい兄貴キャラ産み出せるなとつくづく思う。
前半は妹一筋の過保護で優しい、いつものRejetのお兄ちゃん。復活祭のつり橋効果で恋を育んでゆくが、両者に背徳感が特に感じられないのが却ってうら寒い。
後半で本性を現した後は、この顔とこの声でこんな演技するのかよ!? ってくらい、ぞっとするような下衆さを見せる。
全体的に倫理観がやばい。上でヴァレリーが恐怖度No.1と書いたが、本質的なおぞましさはアロンのが遥かに上。ある意味、ヒロインが一番可哀想な話。
CVはおのゆー。本性を現した後の吐息混じりの話し方が最高。

 

2018/1/6追記
★全巻購入特典「アンデッドクエスト ~幻の花~」
タイトル通り、某懐かしのファミコンゲームのネタがふんだんに盛り込まれたどたばたギャグ。
本編ではみんな前半猫被っていたので、特典もそうかと思いきや、みな最初から素の状態だった。
特典のアンデッド達はSNSも使いこなすしメタ発言もする。かっこいいアンデッドはいません。みんな残念イケメン。
リップサービス程度の取り合いらしきシーンもあるが、逆ハー要素は薄め。個人的にはその方が違和感なく聴けた。
正直、本編の尺が短いので、25分も彼らが喋ってくれるだけで満足感がやばい。かつ25分まじで面白いシーンしかないから多幸感がやばい。ずっと笑っていられる。
本編では全く触れられなかったキャラ設定がちょいちょい回収されていたのはちょっと笑った。
まだアニメイトオンラインショップでは特典が残っている(2018/1/6時点)ので、今からでもゲット可能。
皆も全巻買ってアンデッド達と冒険に繰り出そう!


★その他、個人的なおすすめポイント
本シリーズで面白いなーと思うのが、サンプルボイスから察せられる通り、
6人中3人(ヴァレリー、クー、キルミ)が、ヒロインの「お友達」からスタートしていること。
いや、異性の友達って別に珍しくもない話なんですけども、Rejet作品では珍しいなと。
そこまでRejet作品に精通している訳ではないんですが、今まで聞いてきた他のRejet作品では、
まず初対面で「ちんちくりん女」「よくみると可愛い」みたいな、
良きにつけ悪しきにつけ、女(ひいてはそういう対象)としての品評を受けることが多かったので。
Rejet作品って性的な繋がりを重視している節があるので、そういう勘定を抜きにした「男友達」の概念はないものだと勝手に思っていました。
(ついでにいうとRejet作品において、男女の友情は成立しないものだと思っています)
なので、本シリーズで3人も(ヒロインを利用していたとはいえ)友達として収まっていたのが本当に意外でした。
「勉強のできる穏やかな生徒」の3人が友達として過ごしているのにたいし、
見た目ヴィジュアル系のリジィとネスが、ヒロインをガッツリ女として見ているのも対照的で面白い。
 
この「(仮初めの)男友達」が、復活祭を経てどのような関係に帰結するのか。
そこに着目してみると、Rejet作品の新しい面が見えてくるんじゃないかしら、と思います。
 

長々と書きましたが、短尺ながらもエンターテイメント性がとても高いCDだと思います。
まだ購入されていない方は是非ともご一考を。コプハーは、いいぞ!